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彼は私を1人の人としてではなく、全人類の代表として愛した。

私の精神や考えは愛すべき対象だとして、まるで木や水が私の五感を愛でるように、そんな風に彼は私を愛した。

だから、私が彼を愛したとして、彼は私と同じように私のことを愛しているわけではないのだ。

彼は私の意識や精神を愛したのであって、もしかしたらそれには肉体的なものも含まれていたかもしれないが、決して精神や肉体をひっくるめた私自身を愛したわけではない。

それは若い女性が生まれたての子犬を可愛いと愛でるのと非常に似ており、彼女が子犬を、その子犬だからという確固たる信念があって愛でるわけではないのと一緒で、彼もまた私を愛してはいないのだった。